目次
つかみの重要性
多くの人がプレゼンテーションの目的を間違えている!
セミナーでも個別指導でも常々お伝えしていますが、多くの人がプレゼンテーションの目的を間違えています。それは、単なる「情報伝達」と認識していることです。そのため、彼らは上手な話し方や綺麗な資料の作成方法ばかりを気にして、本来の目的を達成するための対策を講じておりません。
だから、成果が出ないのです。
プレゼンテーションの目的は、具体的な「行動変容」です。それ以外はあり得ません。商品やサービスの情報が伝わっただけでは全くの不十分であり、結局は、売れたのか、選ばれたのか、実際にアクションを起こしたのかが重要だからです。
しかしながら、だからと言って、強引に動かそうとするのはやめましょう。なぜなら、人は無理やりやらされることが大嫌いだからです。営業マンは絶対に売り込んではいけません。そのことについて、80年以上も前から現在に至るまで世界中の人々に読み継がれている歴史的ベストセラー「人を動かす(デール・カーネギー著)」では、以下のように記されています。
人間は、自尊心のかたまりです。人間は、他人から言われたことには従いたくないが、自分で思いついたことには喜んで従います。だから、人を動かすには命令してはいけません。自分で思いつかせればよいのです。
ビジネスの世界で成果を出したいのであれば、発声の仕方やパワーポイントの機能に詳しくなるのも大切ですが、それ以前に、人を動かす伝え方は必修科目であることをご理解ください。
なぜ、つかみが必要なのか?
プレゼンテーションの目的を達成するために最も重要なのは、聞き手が「自発的に」行動することです。強制的に動かしても長続きしません。自ら動いてもらうためには聞き手の興味を掻き立てる必要があり、そこで欠かせないのが「つかみ」です。心をつかむアプローチをすることで、聞き手の注意を引きつけて、前のめりにすることができるようになります。
一方で、聞き手が興味を持っていない場合、どれだけ熱心に説明をしたとしても、そのメッセージは決して届きません。全く聞いていないからです。それだけでなく、つかみがつまらなかったり不適切だったりすると、彼らは話を聞き続けることをやめるどころか、不快感を覚えることすらあります。この状態では、目的を達成するのは極めて難しいでしょう。
したがって、つかみはプレゼンテーションの成功に不可欠な要素です。話し手の期待通りに動いてほしいのであれば、聞き手の心をつかむことは絶対条件です。
つかみの作成方法
目的を明確にする
プレゼンテーションは「逆算」で組み立てます。上述した通り、全てのプレゼンテーションは、まず目的を明確にすることがスタートです。つまり、「聞き手にどんな行動をとってほしいのか」を最初に決めましょう。それを起点として、シナリオを構築し、スライドを作成していくのが正しい手順です。
目的をはっきりと定義したら、それを実現するための具体的な方法を考えます。例えば、営業職は自社商品を売ることが主な目的となりますが、選挙演説をおこなう政治家はとにかく票を集めることが大命題です。つかみの内容は、このように目的に合わせて変える必要があります。
ターゲットを明確にする
大前提として、人は人の話を聞いていません。自分のことにしか興味がないからです。そのため、プレゼンテーションの内容を自分事として認識してもらわなければなりません。
相手はどんな人なのか、どんなことに関心を抱いているのか、どんなニーズがあるのかを知ることから始めましょう。相手に興味を持ってほしいのであれば、相手に興味を持ってください。話はそれからです。プレゼンテーションの主役は「話し手」や「情報」でなく「聞き手」です。どこまでいっても「相手ファースト」であることを忘れないようにしましょう。
驚きを演出する
驚きがないプレゼンテーションは退屈そのものであり、当然、聞き手の心をつかむことはできません。エンターテイメント精神を発揮して、聞き手を飽きさせない工夫が求められます。
つかみとして、聞き手が「間違っていること」を訴求してください。人は誤った認識や勘違いに気がついた瞬間、びっくり仰天します。例えば、当記事でも冒頭で「多くの人がプレゼンテーションの目的を間違えている!」と訴えているのはそのためです。この他、視覚や聴覚を刺激したり、インパクトのある数字や予想外の事例を示すのも効果的です。サプライズを演出して、聞き手をハラハラドキドキさせてあげましょう。
謎を演出する
聞き手に「えっ!?」と思わせることができれば、つかみはOK。頭の上に「!?」マークが浮かび上がっていることは、話に夢中になっている証拠だからです。「!」が先の驚きであるのに対して、「?」は謎です。
つかみとして、聞き手が「知らないこと」を訴求してください。なぞなぞやクイズはとても有効です。例えば、当記事でも「なぜ、つかみが必要なのか?」と問いかけているのはそのためです。人は未知の物事に出会うと、反射的に答えを探そうとします。気になって落ち着かないからです。
本能に訴える
進化の過程より、人類は「論理」でなく「感情」で物事を判断していることが、脳科学の分野で明らかにされています。さらに、その大半は「本能」に支配されています。したがって、聞き手の心をつかみたいのであれば、理屈を並べるのでなく、感情にフォーカスして、本能に訴えなければなりません。
驚きや謎の演出により間違っていることや知らないことが発覚すると、命に危険が及ぶ恐れがあるため「生存本能」や「防衛本能」が働きます。その結果、身を守るべく必死になって行動を起こすのです。例えば、当記事の冒頭で「だから、成果が出ないのです」と問題を指摘しているのはそのためです。つかみとして、「このままではマズい…」と聞き手に健全な危機感を抱かせるメッセージを訴求してください。
引用を用いる
一般に、「何を話すか」より「誰が話すか」の方が大きな影響力を持っています。そのため、つかみとして、権威者の格言を引用すると、聞き手に強い印象を与えることができます。例えば、当記事の冒頭でデール・カーネギーの言葉を引用しているのはそのためです。
つまり、話そのものは同じ内容でも、「誰が話すか」によって聞き手の心象は大きく変わるのです。自社商品のメリットを話し手自身が熱く語っても、聞き手には売り込みや自慢として受け取られるかもしれません。それに対して、権威のある人や大勢の人から話を聞くと、エビデンスや社会的裏付けによる信頼を感じるでしょう。このことを心理学の分野では「社会的証明の法則」と言います。
物語を語る
人は皆、ストーリーが大好きです。ドラマチックに感動するからです。優れたストーリーとは、思わず人に話したくなるものであり、口コミが爆発的に拡散します。だから、プロフェッショナルはストーリーで伝えるのです。
つかみとして、実体験を伴うマイストーリーをイメージが浮かぶように生々しく語ってください。きっと共感を得ることができ、そのプレゼンテーションは成功へと導かれるでしょう。
プレゼンテーションはつかみが9割
誰に、何を、どのように
以上、プレゼンテーションにおけるつかみの重要性と効果的な作成方法について解説しました。まとめると、「誰に」「何を」「どのように」伝えるか、これらを明確にしましょう。そうすることで聞き手をいざないたい世界へ引き込むことができます。つまり、心をつかむことができるのです。
結局のところ、プレゼンテーションはつかめるかつかめないかです。ぜひこの記事を参考にして優れたつかみを作成してください。
真のつかみとは
最後に、世の中のつかみに対する考え方について一言だけ物申したいと思います。
一般的なつかみとは、プレゼンテーション冒頭の入り方を意味しますが、果たしてこれはすべてのシーンに当てはまるのでしょうか。「つかみ」はもともとお笑い用語で、漫才やコントでお笑い芸人が観客を惹きつけるために最初に放つギャグのことを指します。観客の緊張をほぐし、ネタを盛り上げるためにも、最初のつかみで笑わせて勢いをつけることはとても重要です。
しかしながら、数分の漫才であれば、とりわけ冒頭でつかむことが求められますが、我々が主戦場とするビジネス現場は長期戦であり、冒頭をつかんだだけでは全く足りません。真のつかみとは、プレゼンテーション冒頭の「単回攻撃」でなく、プロフェッショナル必勝の「連続攻撃」です。聞き手の心をつかんでつかんでつかみまくるプレゼンターこそが、圧倒的な成果を出し続けることができるのです。日本つかみ協会は、その絶対的な基礎である「つかみ21」を伝授します。
教える・売ることが職業の人たちへ、科学的根拠に基づいて人の心を掴む方法を伝授します。