目次
エレベーターピッチとは
千載一遇のチャンスを掴む瞬殺技
「エレベーターピッチ」とは、ITベンチャーのひしめくアメリカはシリコンバレーが発祥であり、直訳すると「エレベーターが行先階に着くまでの間に強力に売り込む話し方」となります。「pitch」は投げるという意味の他に、「売り込む」という意味もあります。投資家が乗るエレベーターに、偶然を装いながら同乗し、行先階に着くまでの数十秒間に自社の魅力を端的に伝えます。シリコンバレーでは、「エレベーターピッチができない人は、起業家として生き残れない」と言われるほどで、「エレベーターピッチ=サバイバルトーク」と言い換えても過言ではありません。そのため、アメリカの大企業では社員教育としてエレベーターピッチの技術を習得するトレーニングが行われており、ビジネスエリートの常識です。この技術は、公の場でのプレゼンのみならず、上司への報連相や就活での自己PRにも大いに役立ちます。
30秒のセールストーク
エレベーターピッチといえば、世界的に有名な投資家、ウォーレン・バフェット氏の例があります。ダイヤモンド販売チェーンのオーナーであるハーツバーグJr氏は、ある日、ニューヨークのホテルの前でバフェット氏を見かけるなり、彼に近づいて、自社がいかに投資に値するかを説明しました。すると説明を聞き終えたバフェット氏はにやりと笑って、「詳しい資料を送ってください」と一言。この間、たった30秒だったそうです。そして1年後、その会社は好条件でバフェット氏に売却されました。エレベーターピッチを身に付けておけば、数十秒の立ち話であっても、いざというときのチャンスを掴むことができるのです。30秒、約250字で、商品やサービス、自分自身のことを、忙しい相手に分かりやすく説明する方法を身に付けましょう。
GTCメモを作成する
Goal(自分が望むもの)
GTCメモとは、Goal・Target・Connectの頭文字をそれぞれとった呼称で、エレベーターピッチの設計に欠かせないメモのことです。
まずは、自分の目的(Goal)を明確にしましょう。下記のように、「相手にどんな行動をとってもらいたいのか」を決めてください。
体験セミナーに参加してもらう
当然ながら、目的が明確でないと端的に要点を伝えることはできません。目的は1つに絞りましょう。
Target(相手が望むもの)
次に、相手のニーズ(Target)を明確にしましょう。商品やサービスは、相手のニーズを満たすための手段だからです。したがって、相手のことをしっかりと分析しておくことが重要です。例えば、「プレゼンスキルを磨きたい」というニーズであっても、掘り下げていくと、下記のように、細分化することができます。
①人前で話すことに自信をつけて、あがり症を克服したい
②セールストークを磨いて、出世したい
③主催セミナーの満足度を高めて、人気講師になりたい
①のニーズを持っている人に、③の説明をしても、絶対に響きません。ニーズは各々によって異なりますので、必ずリサーチしましょう。
Connect(GとTを結びつけるもの)
最後は、GoalとTargetを結びつける理由(Connect)を考えましょう。例えば、G(自分が望むもの)は「体験セミナーに参加してもらう」、T(相手が望むもの)は「人前で話すことに自信をつけて、あがり症を克服したい」であったとします。この場合、C(GとTを結びつけるもの)は次の通りです。
・人前で話すことに自信がないことの理由は、その経験が不足していることである
・あがり症を克服するには、緊張について正しい知識を身に付ける必要がある
・同様の悩みを抱える人たちと交流することで、自分だけではないことを知ることが大切である
このように、自分と相手を結びつける「理由」を考えて、両者のメリットを重ね合わせましょう。
スクリプトを作成する
フック
フックとは、「相手の心を掴む第一声」のことで、GTCメモのT(相手の望むもの)に該当します。このとき、「結論から言うと」「ズバリ~です」「30秒でご説明します」のようなフレーズを活用することをお勧めします。結論から話し始めると、耳を傾けてくれる確率がグッと高まります。尚、フックは質問形式で行うのが良いでしょう。人は質問をされると、反射的に注意が向くようになるからです。
プレゼンに苦手意識を持つ日本人の割合はなんと84%です。話し方の本や動画は溢れるほどあるのに、なぜこんなにも自信を持てない人が多いと思いますか?
ズバリ、経験不足です。
ポイント
ポイントは、「自分と相手を結びつける商品やサービスのメリット」のことで、GTCメモのC(GとTを結びつけるもの)に該当します。特に、競合他者と異なる独自性を端的に表現できるかは最重要ポイントです。
多くのプレゼン講師は失敗しない、させないように指導するため、いつまで経っても人前で話すことに対する恐怖心を払拭できません。
一方、私が提供するのは安心して挑戦できる環境であり、失敗もポジティブに捉えることで、人前で話すことがどんどん好きになります。
クロージング
クロージングとは、「行動要請」のことで、GTCメモのG(自分が望むもの)に該当します。相手にどうしてほしいのかを明確に伝えましょう。直接的な表現の方が相手も理解しやすいです。尚、商品やサービスに限定性(数量、日数、地域、定員など)を持たせて、「なんとしても手に入れたい!」と相手に感じさせることが大切です。
定員は10名ですが、かなりの人気サービスで残席はわずかです。ぜひお早めにお申し込みください。
ちなみに、上述したスクリプトの文字数を合計すると、ジャスト250字です。これくらいまで情報を絞りに絞りましょう。
スクリプトを作成するときの注意点
文章を短く削る
「分かりやすさ」の本質は「捨てること」です。言うべきことを拾い出す力より、言いたいことを捨てる力を養いましょう。言いたいことを全て伝えようとすると、言いたいことが全て伝わらなくなります。言うべきことだけを精査し、削り倒す。短さは正義です。余計な文章や表現を「そぎ落とす」ことにより、シンプルな文章が出来上がります。外資系の企業では「ワンスライド・ワントピック(一つのスライドに一つの話題)」が徹底されます。なぜなら、そうでないと覚えてもらえないからです。不要な情報は捨てる。捨てる勇気を持ちましょう。
定量的な値(具体的な数字)を示す
「相当な業務の効率化が期待できます」と表現するより、「1日あたり2時間分の時間短縮に貢献します」など、具体的な数字を示した方が、説得力が倍増します。また、単に数字を並べるだけでなく、聞き手がイメージしやすい数字を用いましょう。「今までに売れたiPhoneは400万台」でなく、「1日平均2万台のiPhoneが売れた」と聞く方がより身近に感じるため、その凄さを実感します。「Twitterでは1日5億ツイートされている」でなく、「1秒5ツイート」、あるいは「原稿用紙を積み重ねると富士山9個分」のように例えると具体的なイメージが湧き、インパクトがあります。大きな数字だけをポンと投げるのでなく、皆に分かりやすい文脈を添えましょう。
専門用語を使わない
「分かりやすさ」とは、「思いやり」です。専門用語を使うと、途端に分かりにくくなります。常に相手の立場になり、「専門用語を使っていないか?」「易しい言葉で話せているか?」と自問自答することが、分かりやすさへの一番の近道です。物事の本質はシンプルな言葉で表現でき、シンプルでなければ相手に伝わりません。
「話が長い」「言葉が難しい」「何を言いたいのか分からない」、これらはスピーチやプレゼンでよく指摘されるポイントです。ビジネスシーンでは、限られた時間で情報を分かりやすく相手に伝えることが頻繁に求められます。話の無駄は時間の無駄に直結します。エレベーターピッチを学ぶことは、全てのビジネスパーソンにとって、遵守すべきマナーとも言えるでしょう。
教える・売ることが職業の人たちへ、科学的根拠に基づいて人の心を掴む方法を伝授します。