あがり症で悩む人が絶対に知っておくべき、緊張に対する正しい向き合い方

現実をあるがままに受け入れる

あなたは緊張しやすいタイプですか?

「下手糞の 上級者への 道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」
私が学生の頃は必修科目だった「スラムダンク」では、安西先生が素晴らしい句を詠んでいます。
何事もまずは自分の現在地を知ることがスタートです。

表題の件、次のうち当てはまるものを選んでください。

a. とても緊張しやすい
b. どちらかといえば緊張しやすい
c. あまり緊張しない
d. ほとんど緊張したことがない

いかがでしょうか?
何を隠そう、私自身は即答で「a」です。だからこそ、必死になってあがり症について調べに調べたわけですが、おそらくこの記事をご覧いただいているあなたも私の仲間なのだと思います。

ご安心ください。アサヒグループホールディングスが調査した全国20歳以上の男女1,579人を対象としたアンケートによると、この質問に対する回答は、上から、a:41.2%b:41.6%c:15.4%d:1.8%、という結果でした。

さらに、この結果を思い切って、緊張する群(a+b)と緊張しない群(c+d)に真ん中で二分してみましょう。すると、実に82.8%の人が「緊張しやすい」と答えたことになります。つまり、世の中はほとんどの人が「緊張しい」ということです。

私は学生時代、サッカー部に所属していましたが、PKが大の苦手でした。ズバリ、緊張するからです。
練習では全く問題ないのに、絶対に外してはならない本番に限って、体がガチガチに硬直します。ペナルティエリアまで向かう歩き方からおかしくなり、ボールを置く手が震え、シュートが枠に飛ばないのです。どれくらい決定力がなかったのか、当時の様子が一発でわかる引退時に後輩からいただいたメッセージを添付します。

ぐぬぬ、遠藤め。見事なハットトリックです…涙

しかしながら、今でこそ笑い話になりましたが、小、中、高、大を通じてサッカーしかしていなかった私にとって、サッカーで上手くいかないことは、自分の人生を否定されるほどの悩みでした。特にフォワードとして、「勝負弱い」というイメージを作ってしまうとレギュラー争いにも大きく影響します。

当時は、「どうしていつも自分だけこんなに緊張してしまうんだろう」と、心の底から悩んでいましたが、それは全くの誤解でした。現実は82.8%の人が緊張しいであり、自分が緊張に襲われるようなシーンでは、皆も緊張しているのです。それどころか、「d. ほとんど緊張したことがない」という人はわずか1.8%であり、そんな人は探す方が難しく、身の回りにいません。

緊張に悩んでいるのは決して自分だけではありません。自分特有の変な体質でもなければ、得体の知れない奇妙奇天烈な現象でもありません。むしろ、自分はスタンダードであり、圧倒的に大多数のタイプであることを知ってください。

 

どんなときに緊張しますか?

もう少し掘り下げてみましょう。

あなたはどんなときに緊張しますか?
先に述べたアンケートでは、以下の結果が得られています。

  1. 大勢の前で話す・スピーチをするとき
  2. 初対面の人に会うとき
  3. 新しい職場や仕事をするとき(人事異動など)
  4. プレゼンや報告を行うとき
  5. 発表会や演奏会のとき
  6. 資格取得、入社試験や面接のとき
  7. 苦手なことを無理にさせられるとき(カラオケ、料理、運転など)
  8. 経験のないことをしなければならないとき(仕事、一人暮らしなど)
  9. 電話で人と話すとき
10. 目上の人(上司、社長、年配者など)と話をするとき

こちらは堂々のトップ10ですが、全てに共通する点は、「他の人の目に晒されて評価される場面」ということです。
これからお伝えすることは、これらのいずれのシーンにおいても活用できるノウハウです。ぜひ緊張に襲われた際は、当記事の内容を思い出してください。必ずや力になれると信じています。

 

魔法の薬は存在しない

一つだけ、残念(?)なお知らせがあります。それは、「緊張を完全に消し去ることはできない」という事実です。

たとえ当記事を熟読したとしても、明日も明後日もしっかり緊張します。いや、それどころか、人生を左右するような大事な場面であればあるほど、その影響力は甚大です。巷にはびこる「あがり症は根絶できる!」なんて言葉は聞こえの良いまやかしです。鵜呑みにしてはいけません。

あがり症に効く魔法の薬は存在しません。その上で、正しい知識をつけて、「あがり症は根絶する必要がない」ということを理解してください。

話し手が緊張していることは、実は良いほうに働きます。聞き手はすぐにその緊張を感じとり、途端に嫌われるのではないかと心配になるかもしれませんが、その逆です。聞き手は応援したくなります。緊張を抑えられないのであれば、それを認めることからはじめましょう。

 

緊張は敵か味方か

トップアスリートたちの緊張に対するイメージ

まず、緊張に対する向き合い方について整理しましょう。

そもそも緊張とは、良いものなのでしょうか?あるいは、悪いものなのでしょうか?
このように聞くと、「いやいや、悪いものに決まってるじゃないか」、「あんなもの無いに越したことはないだろう」と食い気味でツッコミが聞こえてきそうですが、果たしてその向き合い方は正しいのでしょうか?

緊張と常日頃から闘っている人を思い浮かべてみると、トップアスリートの人たちが真っ先に挙げられますが、彼らは緊張に対してどのように向き合っているのでしょうか?
この点には緊張しいの我々にとって、たくさんのヒントがありますので、いくつか事例を交えてご紹介します。

まず、「緊張」は英語にすると「tension」と言います。サッカーをはじめ、チームスポーツでは、試合前のウォーミングアップを行うときなど、「テンションを上げていこうぜ!」と互いに声を掛け合います。これを日本語に直訳すると、「緊張感を高めていこうぜ!」となりますが、あがり症に悩む我々からすると、「コイツは何を血迷ったことを言い出したんだ」と思わず二度見をするでしょう。もしかすると我々は、言葉そのものが真に意味するところから、大きな勘違いをしているのかもしれません。

実際に、国内のトップアスリートたちが残した緊張に対するコメントを見てみましょう。

錦織圭選手
毎試合で緊張しますが、それは決して悪いことではないと思うし、その緊張も力に変えられるようになったら強いですね。

まずは、世界的なテニスプレイヤーである錦織圭選手。毎試合で緊張しているため、彼も緊張しいのようです。ただし、その点は我々と同様ですが、その後に続くコメントから、緊張に対する向き合い方が異なっていることがわかります。緊張をポジティブに捉えているのです。

岡崎慎司選手
全ての試合で緊張します。重要な試合に限らず、日々の試合も全て。緊張して当然。逆に緊張しないとまずいと思います。

次に、サッカー日本代表の岡崎慎司選手。錦織選手と同様、彼もまた全ての試合で緊張している緊張しい。しかしながら、やはり向き合い方が異なっています。我々は緊張するからまずいと思っていましたが、それとはまさに180度真逆です。

イチロー選手
緊張しない人はダメだと思う。

極め付けは、我が日本プロ野球界が誇るイチロー選手。あがり症の人は「緊張するからダメだ」と考えがちです。私も「緊張さえしなければ」と、ずっと思い込んでいましたが、これはとんでもない間違いだったのです。

彼らは緊張がパフォーマンスを高めるために必須の要素であることを知っています。緊張しいだったからこそ、成功したのです。つまり、「緊張しやすい人は、成功しやすい人」なのです。冒頭の質問で「a」と答えたあなたは、成功しやすい人だったのです。今まであがり症の自分が嫌いだった人は、そんな自分を愛してあげてください。緊張とは、欠点でも短所でもなく、長所でありポテンシャルです。輝かしい人生にするために、不可欠なエネルギーこそが、緊張なのです。

 

ヤーキーズ・ドットソンの法則

とは言うものの、さすがに彼らと自分は違うと思われるかもしれません。そんな人のために、別の視点から見たエビデンスをご紹介します。

1908年にヤーキーズ博士とドットソン博士が心理学実験により明らかにした「ヤーキーズ・ドットソンの法則」です。ヤーキーズ博士はアメリカ心理学会の会長を務めており、極めて信憑性の高い基本的な法則として専門家の間で知られています。またの名を「緊張の逆U字理論」と呼び、横軸に緊張の強さを、縦軸にパフォーマンスの高さをとると、綺麗な逆U字曲線を描く生理心理学の基本法則です。

この図を見ると、我々は右側に寄り過ぎている「過緊張」と呼ばれる状態で悩んでいることになりますが、このとき、リラックスすればするほど、パフォーマンスは向上すると思っていませんか?
それは全くの誤りであることがわかります。

この曲線は綺麗な逆U字型です。リラックスしすぎると、過緊張と同じだけ、パフォーマンスは下がるのです。緊張は適度にあった方が良くて、これを「適正緊張」と呼びます。

「ゾーン」という言葉をご存知でしょうか?
しばしば、テニスや卓球の試合で勝利した選手が、「ボールがスローに見えて外す気がしませんでした」とか、「ボールが止まっているようで細かな縫い目まで見えました」と表現されますが、このような無双モードの状態になることを「ゾーンに入る」と言います。緊張をコントロールすることができれば、集中力、筋力、記憶力など、人間のあらゆる能力を大幅に引き出すことができるのです。

上述したトップアスリートたちはこのことを熟知しており、自身が持つパフォーマンスを最大限に引き出すために、緊張をコントロールしようと訓練しています。

昨年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されましたが、なぜ、あれほどの大舞台の中、自己新記録や大会新記録が続出するのでしょうか?
途轍もない緊張感が存在するからです。その莫大なエネルギーを適正にコントロールすることができれば、いつもは走れなかった速さで走ることができ、練習では跳べなかった高さまで跳ぶことができるのです。

恐れは最高のモチベーションです。失敗したくないという気持ちが、何度も練習に打ち込ませてくれます。そうしているうちに自信がつき、恐れは消え、プレゼンは前よりもずっとよくなるのです。

 

「緊張は味方」と知るだけでパフォーマンスは上がる

実は、当記事をここまでご覧いただいたあなたは、もう既に今までより過度に緊張しなくなっています。具体的な緊張のコントロール方法については、まだ何も学んでいないにも関わらず、です。なぜでしょうか?

それは、「緊張は悪いものではなく、良いものである」ということを知るだけでパフォーマンスは上がるからです。それを証明するデータがあります。

ハーバード大学(ジェレミー・ジャミソン博士)が行った実験で、学生60人を対象に数学の試験を実施しました。学生は2つのグループに分けられ、一方のグループにのみ、以下の内容を説明しました。

不安な感情はパフォーマンスを下げると考えられていますが、最近の研究では緊張はパフォーマンスを下げない。むしろ不安があった方がパフォーマンスを上げることがわかっています。もし試験中に不安を感じたなら、緊張はあなたの助けになることを思い出してください。

結果は、「説明なし」のグループの平均点は705点だったのに対し、「説明あり」のグループは770点。「緊張はパフォーマンスを高める」という説明を受けたグループの方が、65点も高く有意差を持って高得点を出したのです。つまり、緊張をポジティブに捉えるだけで、パフォーマンスは上がるということを示しています。実際の入学試験などでは、この差は合否に直結します。学力もさることながら、緊張に対する向き合い方次第で、人生が変わるのです。

あなたは緊張しているとき、「嫌だ」とか、「最悪だ」とか、ネガティブな反応をしていませんか?緊張を「悪者」にしてしまうと、パフォーマンスは上がりません。

私の部屋では大好きな松岡修造さんが毎日こう叫んでいます。

さすがです笑

緊張は「敵」ではなく、「最強の味方」です決して倒すべき相手ではありません。長い人生を共に歩んでいく愛すべき伴侶なのです。

あがり症で悩む人たちにとって、緊張と仲良く付き合っていくための一助になりましたら幸いです。

 

教える・売ることが職業の人たちへ、科学的根拠に基づいて人の心を掴む方法を伝授します。

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森田 翔

森田 翔

プレゼンテーション・プロデューサー

《略歴》
1984年石川県金沢市生まれ。2008年明治薬科大学を卒業後、エーザイ株式会社の営業職として12年勤務。2020年独立し、日本つかみ協会を創設。2023年戸板女子短期大学の非常勤講師を務める。
主催セミナーの開催数は年間300回以上、累計受講者数は3,000名を超え、24ヶ月連続で人気ランキングNo.1/600講座(ストアカ:プレゼン部門)を獲得。
花火大会で3万人の前でプロポーズを行う(フジテレビ、とちぎテレビ・ラジオ出演)など、公私共に様々なシーンのプレゼンを経験。個人・法人を問わず、研修・コンサルティング事業を運営。

《研修実績》
エーザイ株式会社、EAファーマ株式会社、日本ロレアル株式会社、アラガン・ジャパン株式会社、株式会社大和書房、東京コミュ塾、株式会社秀光、株式会社オカムラ、株式会社バレン、東京海上日動あんしん生命保険株式会社、りそな総合研究所株式会社、株式会社ベネフィット・ワン、一般社団法人みらいビジネスラボ、ユニオン労働組合、埼玉しごとセンター、松山しごと創造センター、茅ヶ崎市役所、他多数

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