なぜ結論を先に伝えなければならないのか?

結論ファーストが望ましい理由

「結論を先に言いなさい」。誰もが一度は言われたことがあるであろうこの言葉。上司への報連相、顧客へのプレゼン、会議での発言など、あらゆるビジネスシーンでは結論を先に伝えることが求められます。しかしながら、いったいそれはなぜなのか。もう二度と言われないために、今回はその理由を考えてみましょう。

 

ビジネスパーソンは忙しい

まず、我々は毎日をとても忙しく過ごしています。そのため、時間を無駄に浪費することには強いストレスを感じます。特に上司は多忙を極めています。自分だけでなく、他の部下からもたくさんの報連相を受けます。多い人では、報連相だけで一日に30件以上もの電話がかかってくるそうです。一分一秒たりとも無駄にできない環境下で、物事を少しでも前に進めるためには、今すべきことを即座に決断し、実行に移すことが求められます。このとき、判断材料がないと貴重な時間がただひたすらに奪われるため、イライラは爆発するのです。時間は人生そのものです。他人の人生を雑に扱う行為は嫌われて当然であり、相手のことを大切にできるか否かは評価に直結します。時間泥棒は犯罪です。結論ラストはダメ、絶対。

 

集中力が続く

結論がわからないと、途中で飽きてしまう可能性が倍増します。ダラダラとした話は、聞く側はとても疲れます。何の話かわからない、いつ話が終わるのかわからない、どんな方向に話が進むのかわからない、このような話を聞くのは苦痛そのものです。結論がわかりさえすれば、聞き手の意識はしっかりと話し手に向きます。結論を先に伝えることは、話に興味を持たせる効果があります。話し手が聞き手に負担を感じさせないようにわかりやすく伝えることは、すべてのビジネスパーソンにとって、最低限のマナーなのです。

 

理解度が上がる

日本語の構造は結論が最後になるため、日本人は元来、結論を先に伝えることが苦手と言われています。そのため、プレゼンもさることながら、とかく報告書やレポートの類はつい長いものになりがちです。むしろ、真面目な人ほど「ちゃんと伝えなければ」と一生懸命になり、回りくどい表現になる傾向があります。しかしながら、結論が最後になると、読み手の理解度は大幅に低下します。結論が先に書かれていれば、概要を把握しやすく、その後の文章も負担なく読み進めていくことができます。はじめにおおよその予測を立て、確認作業として話を聞くことができるからです。何よりもまずは結論を先に伝える癖をつけるようにしましょう。

 

結論ファーストの型

ホールパート法

プレゼンのシナリオを作るための代表的な型をご紹介します。型に当てはめるだけで、誰でも簡単にわかりやすく話すことができます。1つは、ホールパート法です。話は全体像を示してから、具体的な内容へ掘り下げていくのが王道です。

Whole : 全体・まとめ
Part : 部分・詳細

また、同様の型にSDS(エスディーエス)法があります。最初のSはSummary(まとめ)、DはDtail(詳細)、Sは再度Summary(まとめ)の頭文字です。ホールパート法で言えば、最後にもう一度Whole(まとめ)を繰り返したものに相当します。重要なことは何度も伝えた方が記憶に残ります。あわせて覚えておきましょう。

 

プレップ法

そしてもう1つは、プレップ法です。プレップは「PREP」と書き、以下の頭文字をとった呼び名です。結論と理由をセットにして伝えることで、説得力が上がります。

Point : 結論・要点 「結論から言うと〜」「一言で言えば〜」
Reason : 理由・根拠 「なぜなら〜」「その理由は〜」
Example(Evidence): 具体例・裏付け 「たとえば〜」「具体的には〜」
Point : 結論・要点 「つまり〜」「要するに〜」

こちらはSDS法のDtail(詳細)をReason(理由)とExample(具体例)に分けたものと言えます。型を定着させるために、「 」内のフレーズを口癖にしましょう。

 

ダイヤモンドモデル

ダイヤモンドモデルは、下図のように「導入」→「結論」→「詳細の前振り」→「詳細」→「詳細の振り返り」→「結論」→「具体案」の流れで構成されます。ホールパート法との大きな違いは、最後の「具体案」です。具体的なアクションプランがあるか否かで、聞き手を行動に促せる確率が大きく変わります。

また、詳細を3つ提示するとき、「第1は〜、第2は〜、第3は〜」と、番号をつける(ナンバリング)と情報が整理されます。加えて、「〜」の部分は短く端的にする(ラベリング)とインパクトが増し、記憶に残りやすくなります。

 

特に注意すべきシチュエーション

質疑応答

講演や商談で聞き手から質問を受けたとき、第一声は必ず聞かれたことに対する回答を述べましょう。聞いてもいないことを長々と話したり、質問の答えになっていないと、せっかくの素晴らしいプレゼンが台無しになってしまいます。

また、結論を先に伝えることはあくまでビジネスシーンで重視され、日常会話や普段のコミュニケーションはこの限りではありません。夫婦の関係において、片方が営業職などで結論を先に伝えることに慣れた生活をし、片方がそうでない場合、夫婦間のコミュニケーションに齟齬が生じるという話もしばしば耳にします。コミュニケーションは思いやりです。相手と状況に合わせて、正しく使い分けましょう。

 

教える・売ることが職業の人たちへ、科学的根拠に基づいて人の心を掴む方法を伝授します。

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森田 翔

森田 翔

プレゼンテーション・プロデューサー

《略歴》
1984年石川県金沢市生まれ。2008年明治薬科大学を卒業後、エーザイ株式会社の営業職として12年勤務。2020年独立し、日本つかみ協会を創設。2023年戸板女子短期大学の非常勤講師を務める。
主催セミナーの開催数は年間300回以上、累計受講者数は3,000名を超え、24ヶ月連続で人気ランキングNo.1/600講座(ストアカ:プレゼン部門)を獲得。
花火大会で3万人の前でプロポーズを行う(フジテレビ、とちぎテレビ・ラジオ出演)など、公私共に様々なシーンのプレゼンを経験。個人・法人を問わず、研修・コンサルティング事業を運営。

《研修実績》
エーザイ株式会社、EAファーマ株式会社、日本ロレアル株式会社、アラガン・ジャパン株式会社、株式会社大和書房、東京コミュ塾、株式会社秀光、株式会社オカムラ、株式会社バレン、東京海上日動あんしん生命保険株式会社、りそな総合研究所株式会社、株式会社ベネフィット・ワン、一般社団法人みらいビジネスラボ、ユニオン労働組合、埼玉しごとセンター、松山しごと創造センター、茅ヶ崎市役所、他多数

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