コミュニケーション能力は才能でなく、技術である
3種類のメッセージ
ビジネス、子育て、友人関係…。私たちはあらゆる場面で自分の想いを伝えることが求められます。このときに意識したいのが、その言葉の「主語」です。当記事では、伝える力を決定づける「Youメッセージ」「Iメッセージ」「Weメッセージ」の違いをご紹介します。なお、コミュニケーション能力は生まれ持った「才能」でなく、誰もが身に付けられる「技術」です。相手の感情を動かし、行動を促す伝え方のスキルを習得しましょう。
YouよりもI、IよりもWe
Youメッセージ
あなたは仕事が早いね
テストで100点を取るなんてすごいね
あなたは酷いことを言うね
Youメッセージとは、「You(あなた)」が主語のメッセージです。相手を責める、非難する、バカにする、悪口を言うなど、「悪いのはあなただ」「あなたのせいでこうなった」と相手を一方的に決めつけている言葉です。この他、「なんでやらないの?」「なんでそんなことしたの?」など、疑問形(特にWhy)で詰問する表現もYouメッセージの一種になります。この場合、相手は断定的に感じたり、責められているように感じやすい傾向があります。たとえ褒め言葉であっても、主観であるため相手が違うと感じれば効果はありません。多くの人が良かれと思って「相手を変える」という超難問に着手するあまり、むしろ相手との関係を悪くしています。
Iメッセージ
あなたは仕事が早くて、助かるよ
テストで100点を取って、お母さんは嬉しいわ
あなたの言葉で私は傷ついちゃった
Iメッセージとは、「私(I)」が主語のメッセージです。相手が行動することで自分がどう感じるのかを伝え、相手の自主性を促します。Iメッセージは、自分が実際に受けた影響を伝えるため、相手が否定してくることはありません。さらに、IメッセージはYouメッセージよりも受け取った相手の印象に残りやすいと言われています。また、主語を発信者にすることにより、受信者本人でなく、受信者の行動に対する感情を伝えることができます。そのため、受信者はそのメッセージを受け入れやすく、行動変容に繋げることができます。褒めたいときにも、Iメッセージはとても有効です。ただ単に言葉を並べるよりも、自分の感情を伝えることで、相手を肯定できるからです。
Weメッセージ
あなたは仕事が早くて、チームのみんなが助かっているよ
テストで100点を取って、お父さんも喜んでいたよ
あなたの言葉でみんなショックを受けているよ
Weメッセージとは、第三者の複数形である「私たち(We)」が主語のメッセージです。「私」でなく「私たち」にすることで、そのメッセージはより一層インパクトを与え、相手のモチベーションを高める効果があります。受け取った人は充実感を覚え、達成感を感じます。その理由は、組織に認められ、組織貢献ができたことが、ダイレクトに表現されているからです。主語の範囲が広くなるため、Iメッセージよりも、さらに受信者の行動を促す力を持ちます。
人間は、誰だって認められたい生き物です。Youメッセージで責められた相手は、防衛的にならざるを得ません。いきなり攻め込まれると咄嗟に身構えるため、余裕がないのです。一方、「今こんな状況なので、協力してもらえると助かる」「ぜひ力を貸してほしい」とIメッセージで言われれば、「そうか、そういう状況なのか」「なんとかしてあげたいな」と相手のことや状況を慮る余裕が出てきます。Iメッセージの基本的な用法は極めてシンプルで、会話の主語を「私」に置き換えるだけです。たったそれだけのことで、まるで魔法のように、自然に文章が自分の気持ちや感情を表現する会話文になるのです。伝えたいことがあるとき、主語を意識して使い分けることができれば、その想いはきっと相手に届くはずです。
教える・売ることが職業の人たちへ、科学的根拠に基づいて人の心を掴む方法を伝授します。